介護業界は、以前から人手不足が深刻な業界として知られています。
そのような状況下で、新型コロナウイルスが蔓延し、さらに悪化の一途を辿っています。
介護業界の中でも、訪問介護は特に人手不足が深刻化しているのです。
今回の記事では、訪問介護の仕事内容や現状、今後とるべき対策についてみていきましょう。
■訪問介護とは?
訪問介護は、利用者の自宅を訪問して日常生活の援助をおこないます。
サービスを提供するスタッフは、訪問介護員やホームヘルパーと呼ばれます。
訪問介護員として仕事をするためには、都道府県知事が指定している介護職員初任者研修を修了しなければいけません。
以前は、ホームヘルパー2級という資格があったのですが、2013年4月1日の介護保険法施行規則改正に伴って介護職員初任者研修に変更されました。
訪問介護員が行える仕事は、排せつ・食事・入浴などの身体介護、掃除・買い物などの生活援助が中心です。
■訪問介護の現状
訪問介護を提供する事業所では、新型コロナウイルスの影響によってスタッフが退職するという事態が多発しています。
ホームヘルパーとして働いている人の中には、60代や70代のスタッフもいます。
年齢の高いスタッフは、自分自身が感染してしまった場合に重症化するリスクが高いという懸念から退職を決める場合が多いです。
また、ホームヘルパーとして複数軒回る中でウイルスを媒介してしまうのではないかという不安も付きまといます。
退職者が多ければ求人を出しますが、応募がほとんどない事業所もあるのが現状です。
もしも介護スタッフがいなくなってしまえば、利用者に適切なサービスが提供できません。
このままでは事業所として破綻してしまうため、管理業務を行うサービス提供責任者が現場に出て介護スタッフの不足をカバーするというケースも珍しくありません。
それでも対応しきれない時は、新規の利用希望者を泣く泣く断ったり、訪問の時間を変更してもらったり、苦肉の策でなんとか運営しています。
また訪問介護では人手不足だけではなく、ホームヘルパーの感染対策にも力を入れる必要があります。
感染対策は事業所にとって負担になるケースもあり、訪問介護をメインで行っている事業所はかなり苦しい状況にあると考えられます。
徹底した感染対策のために1軒ごとにマスクや靴下を変え、手指消毒も怠ってはいけません。
使用するタオルも1軒ごとに変えたり、利用者の体温チェックを行ったりといった取り組みも欠かせません。
万が一、感染の可能性がある利用者の対応をする場合に備えて、防護服やフェイスシールドを持ち歩いているホームヘルパーもいます。
ホームヘルパーとして働いていた人の中には、基礎疾患があるという理由で家族から退職を求められた人もいます。
基礎疾患があると、新型コロナウイルスに感染した時の重症化リスクが高いことが理由です。
ホームヘルパーは複数軒を訪問し、利用者やその家族と関わりを持ちます。
そのため、入所施設の介護スタッフよりも感染リスクが必然的に高まります。
家族や自分の健康を天秤にかけた時、退職に考えが傾いてしまうのは自然の流れでしょう。
■今後とるべき対策とは?
介護業界は深刻な人手不足に陥っていて、このままではさらに人手が不足してしまうことが予想されます。
人手不足が深刻化すると、必要な介護が受けられない人が続出していまいます。
介護保険制度が完備されていたとしても、サービスを受けられない状況になる可能性もないとは言い切れません。
介護の現場では、どのような状況であっても利用者の生活を守らなければいけません。
利用者の生活をサポートするのが役目なので、介護スタッフはその使命感から仕事に取り組んでいるという状態になりつつあります。
介護を受ける人のためには使命感も重要ですが、今後は基本報酬を見直すことによって仕事に見合った報酬を介護スタッフが受け取れるような状態を作っていく必要があると考えられます。
そのために重要になるのが介護職員処遇改善加算です。
介護職員処遇改善加算は、訪問介護事業所を含む介護事業所で働いている介護スタッフの賃金を上げるための加算制度になります。
この加算申請するには、キャリアパス要件と職場環境等要件をクリアしなければいけません。
キャリアパス要件はⅠ~Ⅲの3種類があり、Ⅰは職位や職責、職務内容に応じて任用要件と賃金体系の整備をする、Ⅱは資質向上のための計画を立てて研修を実施したり研修の機会を設けたりする、Ⅲは経験や資格などに応じて昇給する仕組みもしくは一定の基準に基づいて定期に昇給を判定する仕組みを設けるという内容です。
職場環境等要件は6つの区分に分けられています。
入職促進の取り組みやキャリアアップに向けた支援、多様な働き方の推進、心身の健康管理、生産性を向上するために必要な業務改善に関する取り組み、やりがいや働きがいの醸成が盛り込まれていて、3つの区分を選択して1つ以上の取り組みを行うことが2021年度に定められました。
介護職員処遇改善加算という制度があっても、本当に給与に反映されるのか不安に感じる人もいるでしょう。
制度に対して不安を抱く気持ちも分かりますが、介護業界は人手不足に悩まされているため、少しでも優秀な人材を確保したいと考えています。
他よりも条件を良くして1人でも多くの介護スタッフを雇用したいと考えている事業所は少なくありません。
また給与額を指標に求人をチェックする人も多いため、介護職員処遇改善加算で給与アップを実現している事業所も多くあります。
給与が少しでも高い方が仕事に対するモチベーションも高まり、心身ともに負担を感じやすい介護職に見合った報酬が得られていると感じやすくなります。
そのため、今後はこの制度が活用されていくと予想できます。
訪問介護を含む介護職は、人手不足がかなり深刻な状態になっています。
人手が不足しても高齢化社会の日本では、介護サービスの需要は高まり続けていくでしょう。
介護スタッフが不足してしまうと、管理職が現場に出なければいけない状況となります。
それでも人手が足りなくなれば、新規利用者を断らなければいけない、訪問の時間帯を変更してもらわなければいけないといった状況も生まれます。
このような状況は利用者にも迷惑をかけてしまうため、介護スタッフの処遇を少しでも改善できるような取り組みをより積極的に行う必要があると言えるでしょう。
このように介護業界は現在圧倒的売手市場です。健康でやる気のある方にとってはすぐに良い条件の施設を紹介してもらうことが可能です。興味のある方はぜひ福島介護求人・転職ナビで介護のお仕事に応募してみましょう。