訪問介護員(ヘルパー)とは
訪問介護員は要介護者(利用者)の居宅を訪問し、日常生活の援助などの介護サービスを行う介護スタッフです。介護保険法に基づいて訪問介護を提供する者のことであり、ホームヘルパーとも呼ばれます。
訪問介護員になるには、都道府県知事の指定する「介護職員初任者研修」を修了している必要があります。以前は「ホームヘルパー2級」という資格がありましたが、2013年4月1日の介護保険法施行規則改正に伴い、新たに同資格に相当するものとして介護職員初任者研修がスタートしました。この研修は訪問介護だけでなく、施設介護にも活かせる内容となっています。
また、旧認定資格の「ホームヘルパー1級」に相当し、「介護職員基礎研修」の実施内容も含む後継資格としては、「介護福祉士実務者研修」が設けられています。
訪問介護員として働くメリット・魅力
訪問介護員のメリットや魅力としてまず挙げられるのが、仕事中に職場の人間関係に悩まされないことではないでしょうか。
もちろん、所属する事業所との事務的なやり取りなどは発生しますが、施設や病院で介護の仕事をするのとは異なり、基本的には利用者と一対一の関係です。ほかのスタッフに気を遣うような煩わしさがありません。利用者と良好な関係を築くことができれば、働きやすい職種だといえるでしょう。また、さまざまなお宅に伺い、性別も年齢も異なる利用者と接することで、幅広い知識やスキルを身につけられる点も見逃せないポイントです。
登録ヘルパーや派遣ヘルパーというスタイルで働くのであれば、時間の融通がきくことも魅力のひとつ。家事や子育ての合間を有効活用して収入を得ることができます。短時間に限定して働く、曜日を決めて働くなど、自分の生活パターンに合わせた働き方をしたいという人にとっては、大きなメリットがあるといえそうです。
訪問介護員として働くのが向いている人はどんな人?
訪問介護員の仕事は、高齢者のお世話をすることです。小さな子どもの世話や動物の世話など、「何かの世話をすることが好きだった」という人は、訪問介護員向きといえます。ただし、相手に対する思いやりの気持ちを持てることも大切。相手のことを考えずに、なんでもかんでも世話を焼こうとするのでは独りよがりな行為になってしまいます。
のんびりと気長に待てる性格の人、聞き上手な人も訪問介護員向きといえるでしょう。高齢者はひとつの行動にも時間がかかりがちですし、思い出話など同じ話を何度も繰り返す傾向があります。そんなときにもイライラせずに相手をしてあげることが、利用者にとっては大切。「コミュニケーション能力が高いほうがいい」という意見もありますが、積極的に接することだけがコミュニケーション能力ではありません。利用者や家族と良い関係が築けるなら、それも高いコミュニケーション能力といえるでしょう。
そのほか、体力に自信のある人、責任感のある人も訪問介護員向きといえます。
訪問介護員ができること
訪問介護員ができることには「身体介護」と「生活援助」があります。ここでは、それぞれの内容について説明します。また、この2つ以外には訪問介護員が運転する車への乗降車や病院での受診手続きなどを介助する「通院等乗降介助」も行うことができます。
〇排泄、食事、入浴などの「身体介護」
身体介護とは訪問介護員が利用者の体に触れて行う介助を指します。具体的には食事介助、入浴介助、排泄介助、歩行介助、さらに着替えや洗面、車いすなどへの乗降などが挙げられます。
〇掃除や買い物などの「生活援助」
生活援助は利用者やその家族等が行うのが難しい日常の家事全般のサポートを指します。具体的には掃除、洗濯、調理、食事の用意、ゴミ出し、布団干し、買い物、薬の受け取りなどが挙げられます。
訪問介護員ができないこと
訪問介護員は「医療行為」と「日常生活の範疇を超える家事代行」には携わることはできません。その理由は、訪問介護は介護保険に基づいて行うものであり、訪問介護員はあくまで「介護のスペシャリスト」だからです。また、医師法や保健師助産師看護師法の規定により、医療行為は緊急時を除いて医師や看護師等の医療職にしか行えません。
以下、訪問介護員にはどんなことができないのかを説明します。ただし、制限されている内容は市区町村によって異なる可能性があるので注意してください。
●医療行為とされる事柄
訪問介護員が医療行為(法律用語では医行為)に及ぶのは違法です。ただし、高齢化が進み、かつては医療行為として禁じられていたことが「医療的ケア」として訪問介護員にも認められるようになりました。本来は医療行為であっても、条件付きで認められているものもあります。具体的に見ていきましょう。
まず、訪問介護員には認められていない医療行為は、摘便、インシュリン注射、血糖値測定、医師の診断が必要な傷を消毒したり薬を塗ったりすることなどです。血圧は、測定するだけなら医療行為には該当しませんが、その数値から訪問介護員が勝手な判断をして何かしらの処置をすること、例えば服薬を指示するといったことは認められていません。
医師の診断や専門知識を必要としない医療行為については「医療的ケア」として訪問介護員でも行うことが認められています。例えば程度の軽い傷に薬や軟膏を塗ること、湿布薬を貼ること、目薬をさすこと、坐薬を入れること、市販の浣腸をすること、医師や薬剤師の管理のもと処方された薬を飲ませること、人工肛門の管理補助、導尿の補助作業などです。
また、痰の吸引と胃ろうなどの経管栄養については、定められた条件を満たせば、訪問介護員でも処置することができます。
なお、体温の計測や自動血圧測定器による血圧測定、軽微な切り傷・擦り傷・やけどなどについて専門的な判断や技術を必要としない処置をすること、などは原則として医療行為に該当しない身体介護の範囲内とされています。
●日常生活の範疇を超える家事代行
前提として、生活援助が行えるのは、次の3つの場合に限られます。利用者が一人暮らしの場合、利用者の家族等が障害や疾病を持っている場合、家族等に障害や疾病がなくても同様のやむを得ない事情よって家事が困難な場合です。これらのどれかに当てはまらない場合は生活援助を行うことはできません。
また、利用者が使用する居室以外の掃除、来客の応接などの直接、本人を援助するわけではない行為、大掃除や庭掃除などの日常的な家事の範疇を超える行為、ペットの世話や金銭・財産管理などの行わなくてもとくに日常生活を送るのに支障が生じないと判断される行為も、訪問介護員が行うべき生活援助とはみなされません。
訪問介護員の活躍の場所・就職先
訪問介護員は介護保険法で指定された訪問介護事業所に所属して働きます。事業所には社会福祉法人やNPO、民間企業などがあります。中でも近年、多くなっているのは民間の訪問介護事業所(ヘルパーステーション)です。
訪問介護員は基本的に、これらの事業所から利用者が暮らす居宅を訪問して介護サービスを提供します。しかし最近では一般的な居宅を訪問する以外にも、以下のような現場で活躍する訪問介護員が増えています。
〇有料老人ホーム
有料老人ホームの中でも訪問介護員が必要とされるのは、住宅型有料老人ホームと呼ばれる施設です。住宅型有料老人ホームには、介護付き有料老人ホームと違って、介護サービスを行う専任スタッフが常駐しません(※ 施設スタッフは常駐しています)。そのため利用者の必要に応じて、訪問介護員による訪問介護サービスが提供されます。
〇介護サービス付き高齢者住宅(サ高住)
介護サービス付き高齢者住宅は民間企業が運営するバリアフリー対応の賃貸住宅です。こちらは訪問介護員利用型とデイサービス併設型があり、前者の場合は訪問介護員が活躍します。
〇高齢者専用住宅
高齢者専用住宅も民間企業などによって設置・運営されている高齢者向けの賃貸住宅です。しかし、2011年に「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」が改正され、現在は上記の介護サービス付き高齢者住宅に一本化されています。したがって、もともと高齢者専用住宅として存在していた施設も、現在はサ高住と同じように訪問介護員が活躍しています。
訪問介護で大事なのは、利用者と深い関係を作りながらケアを行っていくことです。そのため大変さもありますが、やりがいの大きい職種と言えます。また、正社員だけではなく、パートや登録ヘルパーという働き方も可能なため、ライフスタイルに合わせた働き方ができるのも魅力です。訪問介護に興味のある方は、是非求人を探してみてください。