36協定とは?
2020.06.15掲載
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業界用語

「知らなかった」では済まされない!?36協定の基礎知識

皆さんは「36(サブロク)協定って何?」と聞かれたら、正しく答えられますか?
「聞いたことはあるけど、正確にはなんだかわからない・・・」という方も多いのではないでしょうか。

2019年4月1日から「働き方改革関連法」が順次施行されています。そして、このなかで労務管理に特に大きな影響を与えると言われているのが「36協定」と「残業時間の上限規制」です。何がどう変わり、労務担当者は何をしなくてはならないのか。今回は、36協定の基礎知識と時間外労働の上限規制の内容について整理してみたいと思います。

36協定とは?

36協定とは、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。 労働基準法第36条により、会社は法定労働時間1日8時間、週40時間を超える時間外労働及び休日勤務などを命じる場合、労組などと書面による協定を結び労働基準監督署に届け出ることが義務付けられているため、一般的に「36協定」という名称で呼ばれています。

法定労働時間を超えて労働する必要がある場合には、労使間で「36(サブロク)協定」を締結し、所轄労働基準監督署に届出をしなければなりません。ところが、これまでは労使間の合意があれば労働時間を無制限に延長することができるという抜け穴がありました(なぜこのようなことが可能だったのかについては、後ほど説明します)。今回大幅に労働基準法が改正され、時間外労働の上限時間が初めて法的に定められました。したがってこれまでよりも厳密な労働時間の管理が求められます。違反に対しては罰則も設けられています。

36協定はすべての企業が届け出なければいけない?

会社が法定労働時間超えて労働(法定時間外労働)させる場合、または法定の休日に労働(法定休日労働)させる場合には、労使間で「時間外労働・休日労働に関する協定書」を締結し、別途「36協定届」を労働基準監督署に届け出ることになっています(「36協定届」に労働者代表の署名又は押印がある場合は協定書と届出書を兼ねることができます)。労働者がたった1人の場合でも、届け出が必要です。

もし、「36協定届」を労働基準監督署に届け出ずに労働者に時間外労働をさせた場合、労働基準法違反となります。

時間外労働・休日労働の基礎知識

ここからは36協定の締結と届け出が必要となる時間外労働について、具体的に確認しましょう。

・「36協定届」が必要となる時間外労働
 以下の場合に、「36協定届」が必要となります。

法定労働時間」を超えた時間外労働を課す場合
「法定労働時間」とは労働基準法で定められた労働時間の限度です。原則は1日8時間、1週40時間と定められています。それに対し、会社ごとに就業規則や雇用契約書で定めている労働時間を「所定労働時間」といいます。「所定労働時間」は「法定労働時間」を超えて設定することは、原則できません。

変形労働を使った場合は、所定労働時間が1日8時間、1週40時間を超えることもありえます

「始業が9時で終業が17時、休憩1時間」という就業形態における法定労働時間と所定労働時間の関係を見てみましょう。

この場合の、1日の所定労働時間は7時間です。残業が1時間以内であれば、時間外労働を含めても法定労働時間内に収まります。法定労働時間内の残業は「法定内残業」と呼ばれます。この場合は36協定届の対象外です。ただし、残業が1時間を超える場合には、法定労働時間を超えた時間外労働になるので、36協定届が必要です。

「法定休日」に労働を課す場合
 「法定休日」とは労働者に対して必ず与えなければならないと法律で決められている休日です。使用者は労働者に対して毎週少なくとも1回の休日、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を付与しなくてはなりません。もしこれらの法定休日に労働させる必要がある場合には、「36協定」の締結と届け出が必要です。

働き方改革関連法:「時間外労働の上限規制」の注意点

時間外労働の限度時間
 労使間で「36協定」を締結し届け出をしたら、いくらでも労働時間を延長できるかというと、そうではありません。「36協定」においては、「1日」、「1ヶ月」、「1年」それぞれについての延長時間を定めることができます。そして延長可能な時間には限度があります。

36協定の「特別条項」
従来と同じく、繁忙期などで限度時間を超える労働が必要となる場合には「特別条項付きの36協定」を届け出てれば、上記の限度時間を超えた延長時間を設定することができます。ただし、法改正後は、この特別条項の延長時間に上限規制がつきます。また時間外労働が1ヶ月45時間を超える回数は6回以内と定められており、それ以上になると違反となります。

1年の上限は720時間以内
「36協定」の特別条項で定めることができる時間外労働の年間上限は、法定休日労働を除き720時間です。これを超える時間を設定したり、特別条項で定めた時間以上の時間外労働をさせたりした場合は、法律違反となります。もちろん特別条項で1年の上限を600時間と定めているのに、700時間働かせても法律違反です。

特別条項があっても、月45時間を超えた時間外労働が許されるのは年間で6ヶ月のみです。従って、残りの6ヶ月で時間外労働ができる時間合計は720時間ー45時間×6=450時間となります。

1ヶ月の上限は100時間未満
「1ヶ月100時間未満」とは、単月での法定時間外労働と法定休日労働を合わせた時間です。たとえ特別条項を用いて①の450時間分の延長を定めたとしても、1ヶ月100時間以上の時間外労働・休日労働をさせることはできません。

2ヶ月ないし6ヶ月の時間外・休日労働時間の平均は月80時間以内
 1年単位の上限・1ヶ月単位の上限が決まっているだけではなく、2ヶ月~6ヶ月の平均をすべて80時間以内に収める必要もあります。