介護プリセプター制度
2020.09.21掲載
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業界用語

 「プリセプター制度」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?一般的には看護業界で使われている言葉です。一人の新人職員(プリセプティ)に、一人の先輩職員(プリセプター)がついて指導し、業務を覚えていく教育システムのことを指します入社前の理想と入社後の現実とのギャップに悩む新入職員に対し、先輩職員がフォローし早期離職を避けることを目的としています。このプリセプターシップは介護現場でも全く同じ目的で取り入れられています。かく言う筆者も現役の介護員時代はプリセプター研修を受け、実際に新入職員の指導を行っていましたが、なかなかに難しいものです。

 本稿ではプリセプティーがどんなことに悩みを持ち、プリセプターはどのようにしてそれらを解決するのかについて、お話を進めて参ります。

 

リアリティーショック

 多くの新入職員さんたちが少なからず感じること、それは「理想と現実のギャップ」です。入社前には「こんな職員になりたい!」と思っていても、現実はそんなに甘いはずもなく、右を見ても左を見ても問題が山積していて自身の仕事を顧みる暇もなく、ただただ仕事を消化できない自分に失望してしまいがちです。その状況を「リアリティーショック」と呼びますが、もしそんな時に自分の仕事を評価・指導してくれる人がいたら…、理想と現実のギャップを埋めてくれる人の存在があったら…、たったそれだけのことで離職率は大きく下げることが出来るのです。

 

リアリティーショックが発生する原因とは

 

1.仕事ショック

仕事から得られる成長機会や達成感、仕事上与えられる自律性についてギャップがあることです。

営業や開発などに携われると思っていたのに業務は書類の整理やコピーばかりであったり、華やかなイメージを持っていたのに地道な作業ばかりなどが挙げられます。

2.対人関係ショック

職場の上司や配属先の同僚、同期との人間関係についてギャップがあることです。

配属された部署やチームとの人間関係がうまくいっていない、同期のグループ間で仲が悪いなどが挙げられます。

3.他者能力ショック

職場の上司や同僚、同期の能力についてギャップがあることです。

非常に優秀な同期との仕事量の差に悩む、上司に怒られているばかりで尊敬できる先輩がいないなどが挙げられます。

4.評価ショック

給料・昇進機会についてギャップがあることです。

入社後3年でこの程度の給料があると思っていた、自分より上の年齢層が厚くて役職者になるために想定以上の期間を要するなどが挙げられます。

 

 評価ショックに関してはプリセプターの力だけではどうにもならない所がありますが、仕事ショック・他者能力ショックに関してはプリセプターの声掛け一つが大きく影響するものです。また筆者が一番重篤だと思うのは対人ショックです。以前別の記事でもご紹介しましたが、介護現場の離職率が高いのは人間関係のこじれによるところがとても大きいからです。一度壊れた関係性が元に戻ることは滅多にありませんので、早急に対処しなければなりません。ただし人間関係を取り持とうとすると、時としてプライベートな部分まで足を踏み入れなければならないこともあります。仕事で起こったことなのか、プライベートで起こったことなのかを棲み分けるのはとても難しいですが、もしかしたらプリセプティーの仕事を間近に見ているプリセプターにしか解決できないことなのかもしれませんね。

 

リアリーティーショックには対策を!

1.仕事ショックの対策

 特に無資格・未経験の方に多く起こるように見受けられます。特に介護業界では「介護ってこんな仕事だよね」と、ある程度イメージしていたとしても実際に仕事はもっと早く進行し、確認する暇すらない、という事態だけは避けなければなりません。とても悪い言い方になってしまいますが、「最初から出来るわけがない」という共通認識を周りの職員さんも持つことが大切です。自分が新入職員だった時のことを思い出してみれば、自ずとプリセプティーが求めていることが見えてくるものです。

2.対人ショックの対策

 仕事を円滑に進めるための一番手っ取り早い方法は、良好な人間関係を構築することです。対人ショックはその真逆に起こることです。人間関係で起こるトラブルは種々様々ですが、その原因は意外と些細なことだったりしますので、プリセプターとしてその人の小さな変化に気づいてあげることが大切と言えます。ただし、何でもかんでもプリセプターが解決しようとするとかえって話がこじれる可能性もあります。そうならないように、解決できる範囲を見極め、そこから外れたものは上司へ報告するようにしましょう。プリセプターのメンタルコントロールもまた大事なのです。

3.他者能力ショックの対策

 例えば同期入社が5人いたとしても、全員が全く同じ能力で、全く同じスタートを切れるわけではありません。頭を使って理論的に考えることが得意な人もいれば、考えるよりも先に行動したいタイプの人もいます。力仕事には自信のある人や、覚えるのに多少時間がかかってしまう人だっています。大事なことは、「能力差はどうしてもついてしまう」ということを理解してもらうことです。「そりゃ違う人間なんだから能力だって違って当然でしょ」という大前提を、いかに噛み砕いて教えてあげられるかです。個人的にはここがプリセプターとしての一番の腕の見せ所だと思っています。

4.評価ショックの対策

 プリセプターの多くは3年以上の経験者で新入職員との距離感が近く、且つ上司から妥当だと判断をされた職員が就くことが多いようです。言い方を変えれば「経験はあるが役職に就いていない者」ということになります。よって前述した通り、お給料や昇給に関してはプリセプターにもどうしようもない部分なので、割愛させて頂きます。どちらかというとこれはプリセプターがやるというよりは、面接や入社の段階で施設長クラスの人がしっかり説明するべきことですよね。

 

まとめ

 いかがでしたでしょうか。リアリティショックのこと、なんとなく理解出来ましたか?これはほんの一例です。初めて社会経験を踏む人もそうではない人も、百人いれば百通りの悩みがあるものです。その悩みや困りごとに対して、プリセプターはどこまで気付いてあげることが出来るのか。新入職員さんが介護の仕事を続けていけるのかどうかは、プリセプターの双肩にかかっていると言っても過言ではありません。新入職員さんの一挙手一投足に注目し、気付き、声を掛け、励ますこと。これこそがプリセプターの役割なのかもしれません。