介護福祉士の専門性とは
2020.03.30掲載
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必要資格

 介護の世界は非常に裾野が広く、また敷居が低いとも言われています。一言でいえば資格がなくても介護の仕事に対するやる気や、ある程度の理解があれば誰でもなれる仕事です。10年間介護の現場を経験した筆者としては、可能であるなら誰しもがこの仕事を一度は経験してみるべきだとも思っています。もちろん訪問介護のように資格を持っていなければ出来ない仕事もありますが。

 しかし、誰でもなれるからと言って誰でも出来るとは限りません。そこで今回は介護員の専門性についてお話していきたいと思います。

 

社会福祉士及び介護福祉士法

 「そんな法律あったんだ」とお思いの皆さん。大丈夫です、私も学生の頃は全く知りませんでした。実際にこの法律を知ったのは介護士として働いて数年経った頃です。ご安心ください。大事なのはその中身です。

 

(定義)
第二条
2 この法律において「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、 身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、 医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を 行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。
(誠実義務)
第44条の2 社会福祉士及び介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の 立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない。
(連携)
第47条
2 介護福祉士は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に、認知症(介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第16項に規定する 認知症をいう。)であること等の心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等 との連携を保たなければならない。
(資質向上の責務)
第47条の2 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助又は 介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

 

 

 ……分かるようで分からないですよね。簡単に申し上げますと、介護とは単におむつ交換をしたり食事を食べさせたりお風呂に入れてあげることだけではありません。何故それが必要なのかを考え、自分が取得してきた知識や技術を存分に発揮し、個人の生活をよりよいものとする為に日々技能向上に取り組むことも業務の一部であると明記されています。

 

掃除やベッドメイキングは?

 「掃除やベッドメイキングは誰でも出来る」との見方からこの2つは介護の専門分野には含まれないと定義されがちですが、私はそうは思いません。誰でも出来るなら利用者様がやればいいんです。でもそれが出来ないから介護員に頼っているわけです。掃除には「生活環境を整え、心身共に清潔な生活を送って頂く」、ベッドメイキングには「常に清潔な寝具を使用し、安眠の手助けをする。また褥瘡やその他の皮膚トラブルを防止する」という重要な意味があります。それらはやはり介護を専門に勉強してきた人たちでなければピンと来ないかもしれませんね。

 

介護職の専門性は難しい身体介護を行うことか?

 結論から言いますが、そうではないと思っています。確かに介護助手や生活補助員を雇用している場合ですと、難しいことは介護福祉士に任せたなければいけません。ここで皆さんに考えて頂きたいのは、介護の命題が身の回りのお世話をすることではないということです。オムツ交換も、食事・入浴の介助も個人の生活のほんの一部に過ぎません。一番はそれらを通してコミュニケーションを図り、関係性を構築した上で、病気を患ってもその人がその人らしくいられる為に何をしてあげられるのかを考えること。それが介護福祉士に課せられた使命なのです。ただお風呂を入れてあげるだけ、ただご飯を食べさせてあげるだけのことなら、そのうちロボットに取って代わられるかもしれませんね。

 

愛情の反対は〇〇

 かつて介護現場では、入居されている利用者様に対し「お客様」として接するのが普通でした。しかし時代は変わり、家庭的な雰囲気や温かみを重視するようになり、今となっては「家族」として接することがスタンダードとなっています。利用者が家族であるなら、そこには少なからず「愛情」や「愛着」が湧きます。それとは逆に誰しも怒られたら嫌な気持になりますが、実はもっと嫌なことがあるんです。それは「無関心」です。怒られることよりも、邪険に扱われることよりも、「無視」されることが一番辛いですよね。

 ここから結論となりますが、介護福祉士の一番の専門性は「傾聴」することなのではないかと考えています。ただ話を「聞く」だけなら誰でも出来ますが、耳と心を傾けて利用者様のお話をよく「聴き」、それをどのように日々のケアに反映させるのかを考え実践する。もしかしたら本当に必要な情報は、意味のない会話の中にこそ眠っているのかもしれませんね。