介護予防
2020.02.17掲載
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介護・福祉業界

 「介護予防」のアプローチは、平成18(2006)年、介護保険法の改正にともない、国の制度として導入されました。高齢化社会が進む日本で、今後も割合が増え続ける高齢者が、なるべく介護を必要とせず自立した生活を送れるよう、早期の予防策を打つことが目的です。介護予防を行うことで、高齢者が健康に生きていける社会の実現を目指します。
今回は、自分の老後が心配な人、まだ元気な両親にいつまでも健康で長生きしてもらいたいと思っている人のために、介護予防のサービス内容について詳しくご紹介します。

 

介護予防とは?

 2007年以降、日本はついに「超高齢社会」へ突入し、2017年には高齢化率27.7%で「国民の4人に1人が高齢者」という時代を迎えています。現在介護保険は、該当者に関して1~3割の支払いが義務付けられています。残りの7~9割は国が負担していますが、その財源は主に40歳以上の労働者がお給料から天引きされる形で支払っているのです。この「介護が必要になった高齢者を社会全体で支えるしくみ」を介護保険制度と言います。しかしその財源にも限りがあります。今後より高齢化が進むと予測されている我が国においてこれは死活問題と言えます。そこで提唱されたのが介護予防の考え方です。65歳以上の高齢者が「要介護状態になることを極力遅らせること」または「要介護状態になるのを未然に防ぐこと」、そして「すでに介護が必要な場合は、状態が悪化しないよう努め、改善を図ること」を目的としています。

 

介護予防の具体的な内容

 食生活の見直しによる栄養面での改善、体操やレクリエーション、リハビリテーションなどを通じての運動能力低下の防止、「物を食べる(噛む・飲み込む)」「十分な唾液の分泌を促す」「会話をする(言葉を発する)」「豊かな表情をつくる」といった口腔機能の向上を図り、日常生活の質(QOL)を高めるためにケアします。

 あくまでも予防を目的としたサービスであることから、対象となるのは基本的に自立している健康な高齢者(地域支援型の予防サービスのみ)と、要支援1~2の高齢者です。
 
すでに要介護状態である高齢者については、介護度が低い状態(要介護認定1)のうちからケアをすることで状態の悪化を防いだり、遅らせたりできる可能性が高いと判定された場合に、介護予防サービスを受けられることもあります。

 介護予防サービスの種類は大きく分けて3つありますので以下に記載させて頂きます。

1.介護予防サービス
高齢者が、もともと住み慣れた地域環境で自立した生活を継続していけるように支援するサービスです。できる限りのことを自力でこなせることが前提のため、居宅(在宅)での生活支援が中心です。
 
2.地域密着型介護予防サービス
「1」の介護予防サービスと同じく、住み慣れた地域環境の中で、自立した生活を継続していけるよう支援します。
サービスの種類や内容は市区町村によって異なっていて、このサービスを実施していない自治体もあります。
「地域密着型介護予防サービスを利用できるのはその地域の住民だけ」というのが一つの特徴です。
 
3.地域支援型の予防サービス
それぞれの地域において、要介護認定されていない健康な高齢者、または要支援認定1~2の高齢者を対象としています。
介護度が上がるのを予防しながら、住み慣れた地域環境の中で自立した日常生活を続けられるように支援します。
もっと簡単に言い換えると、「将来的にも、なるべく支援や介護を必要とせずに生きていけるように支援する」サービスです。

 

介護予防サービスの種類と特徴

 ここからは、上でご紹介した介護予防サービスの3つの種類と、それぞれの特徴をさらに詳しく解説します。まずは介護予防サービスについてです。
 
●介護予防サービスの対象者・利用方法
要支援認定1~2の高齢者がサービスの対象です。
事前に地域包括支援センターなどに紹介された介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談しながらケアプラン(介護予防サービス計画)を作成し、そのケアプランに沿ったプログラムを推進していくという流れでサービスを利用します。
 
主な介護予防サービスには、以下のようなものがあります。
 
●介護予防通所介護
高齢者向けデイサービスセンターなどに日帰りで通い、食事や入浴、排泄など日常生活に必要な支援を受け、体操やレクリエーションを行います。そのように心身機能の維持や向上を図ることで、個々の利用者の能力に応じたライフスタイルの実現をサポートします。
 
●介護予防通所リハビリテーション
病院や介護老人保健施設といった施設で、理学療法や作業療法などのリハビリテーションを行い、利用者が自立した日常生活を送れるよう、心身機能の維持と回復を促します。
具体的なサービス内容には、筋力や体力の維持・関節拘縮(こうしゅく)予防・自主トレーニング指導・歩行練習・基本動作や日常生活動作訓練などがあります。
 
●介護予防訪問介護
利用者の居宅を訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問し、家事などを行うサービスです。
個々の利用者の能力に応じた形で必要なサービスを提供し、なるべく利用者が自立した生活を送れるよう支援します。
主なサービス内容は、食事や入浴の介助、排泄介助、掃除、洗濯、調理などです。生活の質の向上に関わるアドバイスなども行います。

 

地域密着型介護予防サービスの種類と特徴

 地域密着型介護予防サービスには、大きく「介護予防小規模多機能型居宅介護」と「介護予防認知症対応型サービス」の2つがあります。
 
●地域密着型介護予防サービスの対象者・利用方法
要支援認定1~2の高齢者が対象のサービスです。
介護予防サービスと同様、ケアマネジャーに相談しながらケアプランを作成し、その内容に沿って必要なサービスを受けます。
 
●介護予防小規模多機能型居宅介護
日帰りの通所サービスが軸となっていますが、利用者の心身の状況や希望に応じて、訪問や短期入所を適切な形で組み合わせ、日常生活をする上での世話や機能訓練なども行います。
主なサービスは、食事や入浴の介助、排泄介助、掃除、洗濯、調理、健康管理、リハビリテーションなど。生活における相談を受け、適切なアドバイスを行うこともあります。
 
●介護予防認知症対応型サービス
認知症を発症している高齢者向けのサービスには、以下の2種類があります。
 
1.介護予防認知症対応型通所介護
高齢者向けデイサービスセンターなどにおいて、軽度の認知症を持つ利用者に対し、食事や入浴、排泄などの介護、健康管理、リハビリテーション、また生活に関わる助言なども行います。
 
2.介護予防認知症対応型共同生活介護
5~9人と少人数が共同生活をする住居で、食事や入浴の介助・排泄介助・リハビリテーションなどを行います。アットホームで落ち着いた雰囲気をつくり出すことで、その効果を高めようという狙いもあります。
要支援2の人のみが利用可能です(要支援1の人は、原則対象外)。

 

地域支援型の予防サービスの種類と特徴

 最後に、市区町村が主体となって実施する、地域支援型の予防サービスの種類と特徴についてご紹介します。
 
●地域支援型の予防サービスの対象者・利用方法
要支援・要介護認定を受けていない全ての65歳以上の高齢者が対象のサービスです。
地域支援型の予防サービスには、対象者別に大きく2つの種類があります。1つは「介護予防特定高齢者施策」、もう1つは「介護予防一般高齢者施策」で、市区町村が状況に応じて提供するサービスです。
両者を合わせて「介護予防ケアマネジメント」とも呼びます。
 
●介護予防特定高齢者施策
今後、要介護や要支援になり得る可能性があると判断され、市区町村に「特定高齢者」と認められた65歳以上の高齢者を対象とした介護予防事業です。
地域包括支援センターなどで「介護予防ケアプラン」の作成を依頼すれば、介護予防特定高齢者施策のサービスを受けることができます。

訪問型と通所型があり、訪問型サービスの場合は、ホームヘルパーによる生活援助のほか、看護師・保健師による生活指導や栄養改善、また高齢者向けの食事の宅配や見守りなどを行います。
通所型の場合、市区町村から委託された病院などの医療法人や保健所、社会福祉法人、高齢者在宅サービスセンターといった公共団体が、介護予防に関する講義を開催することもあります。
 
●介護予防一般高齢者施策
介護保険を利用していない健康な高齢者を含め、65歳以上の全高齢者を対象とした介護予防事業です。
主に、それぞれの地域における介護予防活動の支援や、介護予防の普及・啓発を行っています。
介護予防活動の支援では、健康セミナーや研修会、認知症予防講演会、栄養講座、会食親睦会などを開催したり、ウォーキングや絵画・料理教室の実施、ボランティアへの支援を行ったりします。
また、介護予防の普及や啓発については、介護予防の認知度の向上や基本的な知識の普及を促し、それぞれの地域における自主的な介護予防活動の支援を行います。具体的には、事業展開している団体メンバーによる予防パンフレットの配布や地域のイベントへの参加、講演会の実施、介護予防手帳の交付などが挙げられます。