ADL
2020.03.16掲載
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業界用語

ADL(日常生活動作)

ADLは、これから高齢者の介護を始める方にはまだなじみの薄い言葉かもしれませんが、介護施設やリハビリテーションの世界では一般的に使われている言葉です。

介護を受ける人が、「どれだけ他者の力を借りずに独立して生活できるか」を示す指標として用いられています。 具体的には、決まった時間の起床、着替え、整髪、洗顔に始まり、食事、排せつ、入浴、外出時の移動(歩行)などがADLに当たります。


 齢をとるとともに、こういった動作のひとつひとつができなくなる、もしくは時間がかかるようになると「ADLが低下した」とみなされます。 また、ADLと似た言葉に「手段的日常生活動作=IADL(Instrumental Activities of Daily Living)」があります。これは、同じ日常的な動作でも、たとえば買い物や服薬管理、電話の応対のように、より頭を使って判断することが求められる動作のことです。 とくに在宅介護をしている世帯ならば、高齢者ひとりを家に残して外出する機会も考え、ADLだけでなくIADLの状態も把握しておかなければなりません。

ADLの評価方法

ADLの評価は、決して家族や介護士、ケアマネジャーの主観で決められるものではなく、きちんとした評価スケールがあります。 その中でも、とくによく知られるFIM(Functional Independence Measure)と呼ばれる評価方法では、大きく「運動項目」と「認知項目」のふたつに分け、どの程度の介助が必要なのか、細かな採点基準が設けられています。総合点数が高いほどADLが高い(=介護の必要性が低い)という結果になります。 以下でFIMにおける評価項目を見てみましょう

運動項目 ルフケア:食事、整容、清拭、更衣(上半身)、更衣(下半身)、トイレ
     ベッド・車椅子、トイレ、浴槽
     排尿、排便
     車椅子・歩行、階段

認知項目 理解(聴覚・視覚)、表出(音声・非音声)
     社会的交流、問題解決、記憶

ADLを測るうえでは専門家でなくてもできる非常に便利な評価方法ですが、その際に大切なのは、普段から一緒にいる家族の正しい理解です。 ADLで一概に”できる”といっても、少し背伸びをすれば”できる”こともあれば、難なく”できる”こともあります。またその日の体調によってできる日、できない日もあるもの。また、FIM を実施したあと、気づかないうちに症状が悪化するケースも考えられます。 医師や介護士は、診察やサービス利用の時間しかその人と一緒に過ごす時間がありません。そのため、体調や能力について正しい情報を把握しておくのはやはり家族の役割です。その場限りではなく、日々の暮らしの中で長い目でADL を見て、ケアにあたる必要があります。

高齢者の気持ちを尊重し、無理強いしない

QOL(Quality of Life=生活の質)とは、残存している能力を極力維持し、最期まで人の手を借りずに生活することは、人間の尊厳を守るうえでも大切なことです。そのため家族としては、ADLを保つためにもできることは自分でやってもらうように努めましょう。 ただし、難しい動作を無理に要求したり、時間がかかる動作を急かしたりすることは禁物です。今までできていた動作ができなくなった、または時間がかかるようになったことに一番ショックを受けているのは高齢者本人であることを忘れてはいけません。高齢者の気持ちを忘れずにケアにあたるようにしてください。

 

ADLを維持しながら、QOL(生活の質)の実現を

たとえ障害や高齢が理由でできないことが増えたとしても、人間らしく誇りを持って満足に生活していこうという概念です。 残念ながら、医学の進歩や本人の努力だけでADLの低下を食い止めることはできません。しかし、周囲の手厚いサポート次第で、多少体が不自由でも満足のいく老後を迎えることができます。 体が動くうちは自立できるように努めてもらい、失われた能力については家族や専門のスタッフが、適宜おぎなう。ADLの維持とその先にあるQOLの充実を視野に入れたケアの体制を築いていくことが、質の高い介護を実現するためのポイントとなってくるでしょう。