「床ずれ」という言葉、皆さんは聞いたことがありますか?普段の生活ではなかなか使うことがないこの言葉。実は医療・介護の業界では最頻出単語なんです。まさか「ゆかずれ」なんて読んでいないでしょうね…?違いますよ「とこずれ」ですよ!もっとも、医療・介護の現場では「褥瘡(じょくそう)」という専門言葉で使われています。本稿でも一部「床ずれ」と「褥瘡」が入り混じっていますが意味は全く一緒です。今回はそんな床ずれについて簡単にご説明を致します。
床ずれ(褥瘡)って何?
日本褥瘡学会では次のように定義しています。「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる」。
………?え、どういうこと?と思った皆さん、ご安心ください。筆者が解説いたします。褥瘡とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。高齢者になりがちなイメージですが、実は年齢に関係なく起こるものです。
私たちはふつう、無意識のうちに眠っている間は寝返りをうったり、長時間椅子に座っているときはお尻を浮かせるなどして、同じ部位に長い時間の圧迫が加わらないようにしています。このような動作を「体位変換」といいます。
しかし自分で体位変換できない方は、体重で長い時間圧迫された皮膚の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、これにより「褥瘡」ができます。また皮膚の表面だけでなく、皮膚の中にある骨に近い組織が傷ついている場合もあります。よって寝たきりの人には介護士や看護師が体位交換、つまり寝返りを介助をしてあげるのです。
床ずれの原因と好発部位
床ずれには「外力」「湿潤」「栄養」という主な3つの原因があります。
「外力」・・・仰向けのままずっと過ごしていると段々腰や背中が痛くなってきますよね?それは布団や床の反発が背中・腰などに「外力」として加わっているからです。それが長い時間放置されると、その部分の血流が阻害され、酸素やその他必要な栄養分が運ばれなくなります。
「湿潤」・・・皮膚が湿潤環境にありふやけると、高齢者の場合少しの力でも破れてしまいます。一説には皮膚がふやけていると、乾燥に比べおよそ5倍も破れやすさが高まるとか。常時おむつを着用している高齢者には要注意です。
「栄養」・・・体内のたんぱく質、特にアルブミンの低下は、床ずれ発生の非常に大きな要因です。寝たきりになろうとも適切に栄養状態を保つことが大切です。
「好発部位」とは褥瘡がよく起こる部位のことです。肩、肘、腰(腸骨部)、大転子部、膝、くるぶし、かかと等、骨が出っ張っている所によく発生します。稀に耳や後頭部にも発生します。
床ずれの前ぶれは発赤(ほっせき)
皮膚に赤みが出ることを発赤と呼びますが、褥瘡好発部位発赤が発生している場合、それが褥瘡であるのかを確かめる方法に、人差し指で発赤部分を軽く3秒ほど圧迫し、白っぽく変化するかどうかを確認する方法があります(指押し法)。押したときに白く変化し、離すと再び赤くなるものは褥瘡ではありません。押しても赤みが消えずそのままの状態であれば、初期の褥瘡と考えます。ちなみに学生時代、机に突っ伏して寝ている人のおでこが真っ赤になっているのを見たことがあると思いますが、あれは褥瘡とは違います。
まとめ
褥瘡は血流阻害によって起きます。その阻害されている時間が長ければ長い程褥瘡のリスクは高まります。またおむつや紙パンツを着用されている方は、尿や便、汗などにより皮膚が湿潤環境にあると破れ易くなり、出来た傷にばい菌が入って褥瘡になることもあります。そして、栄養状態(特にアルブミン値)が悪いと褥瘡になりやすく、またなってからの治癒にも時間が掛かってしまいがちです。
これから介護職を目指そうとしている皆さん。きっとこれから褥瘡に直面すると思います。見た目は結構グロテスクですが、なりたくてなる人はいません。そんな意思を汲み取ってあげて、本稿を参考とし是非褥瘡ケアに役立ててほしいと思います。