「介護の仕事」と聞いて皆さんはどんなことを思い浮かべるでしょう。薄給?汚い?サービス残業が多い?たくさん思い浮かぶことはあると思いますが、いずれもポジティブなイメージを持った方はあまり多くないのではないでしょうか。今回は実際に介護現場で10年勤務した筆者が「介護のやりがい」についてお話をしていきたい思います。
やりがいに関してお話する前に、多くの方々が持っているマイナスイメージに関してお伝えしておきます。
介護業界は入社3年未満の離職率が非常に高いと言われています。平成27年10月1日~28年9月30日までの介護労働安定センターの調べによると、新規採用は全体の19.4%。そのうち離職率は16.7%であり、採用した職員のうちたった2.7%しか残らなかったことになります。更にその中で入職3年未満での離職率は67.2%。数字を見ただけで非常に高いことが分かります。
ではその退職理由は一体何なのでしょう。上位3つをピックアップしてみると、1位「職場の人間関係に問題があった」、2位「結婚・出産・育児の為」、3位「法人・事業所の理念や運営に対して不満があったから」となります。……皆さんお気付きでしょうか?冒頭に申し上げたような仕事内容や給与面に不満を感じて退職していく人は全体の中でも少数なのです(詳細はh28_chousa_kekkaを参照)。ちなみにこのデータによると「収入が少ない」は第5位にようやく出てきます。かく言う筆者(既婚・子供1人)も収入に関してはさほど考えたことはありませんでした。
やりがいとは
「やりがい詐欺」「やりがい搾取」という言葉をご存じでしょうか。「経営者が労働者にやりがいという報酬を与えるかわりに、十分な金銭的報酬を与えず、労働力を安く利用して搾取する行為」だそうです。介護業界も世間的にはこれに該当するようですが、私はそうは思いません。やりがいとは、物事を行う上で自分自身が感じる心の張り合いのことであり、その対価を報酬に求めるのは筋が通っていません。そしてやりがいは人によって感じるポイントや熱量が違う為、そもそも数値化出来ないものなのです。
では実際にどんなところにやりがいを感じるのか。ほんの一例ですがご紹介していきたいと思います。
①「感謝の言葉を直接聞ける」
介護士は毎日高齢者や身体が不自由な方、そのご家族の方と接していくため、多くの人々と関わりを持っていきます。普段から生活に関わる時間を共に過ごすことも多く、介護士を家族のように思ってくださる利用者の方もいらっしゃり、利用者様をはじめ、ご家族様などから感謝の一言をもらえたとき、多くの介護福祉士はやりがいを感じ、日々の仕事の活力となります。日々のケアは手探りでも、「自分のケアは間違っていなかったんだ!」と自信を持つ機会にもなります。
②「自分の考えが仕事に反映出来る」
利用者様の生活は、とても単調に思われがちです。お腹が空いたら食べ物を食べ、眠くなれば休み、尿意・便意を感じたらトイレへ行く。暇だと思ったら趣味の活動を行い、疲れたらやめる。おしゃべりが好きなら他者と関わる機会を持ち、一人が好きなら居室で一人で過ごす。これだけ見れば単調に感じてしまうのも無理はないと思いますが、これらは皆さんも普段の生活の中でやっていることですよね。だから「自分ならこうする」、逆に「自分が利用者様の立場ならこうしてほしいんじゃないかな?」等、利用者様の目線に立って物事を考えやすく、それらを仕事に反映することが比較的容易な仕事であると言えます。また迅速に対応出来ることも特徴の一つです。
③「働き方を自由に選べる」
介護職は時間の自由が利かないように思えるかもしれませんが、実はそうではありません。
一言で介護の仕事といっても様々な事業所があります。介護の求人情報を見ると分かりますが、日中だけ営業している、デイサービスに勤務すれば夜勤はありません。また24時間営業の介護施設でも、日勤だけという働き方は十分可能です。逆に、夜勤をすると夜勤手当がつくので、積極的に夜勤の求人を探しお金を貯めようという人もいます。夜勤だけの勤務(夜勤専門・夜勤専従)をして、月に10日ほど働いてあとは自由に過ごす、という人もいます。
またお子さんがいる女性にとっては、パートタイムで働ける事業所がたくさんあるのも魅力。時間や日にちの自由もききやすく、夏休みなどにはお子さんを連れて勤務する人の姿も珍しくありません。あるいは子供が小さい間はあえて職場に連れてくることで、子供に社会性を身に着けさせ、一方で利用者様は子供と触れ合えてほっこり、というケースもあります(ただし子供を連れて仕事をするのは施設長の許可があった場合、または事故や怪我等、もしものことがあっても自己責任を負える方に限られている場合がほとんどです)。そして事業所によっては保育園や託児所が併設されるなど、子育てがしやすいよう環境が整備されている介護施設もたくさんあります。
パッと思い浮かぶだけでもこれだけやりがいを感じられる機会があります。「やりがい詐欺」なんて言われている昨今、こういう経験や機会は決してお金には換えられない部分ですよね。